ほのくんの修学旅行〜場面緘黙でもみんなと行きたい

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外で声が出せなくても、修学旅行へ行きたい。ほのくんの修学旅行前後のお話です。

結末を先に言うと、無事に行って帰って来ました

行き先は、東京と鎌倉です。

話は修学旅行に行く前のところからスタートします。よろしければお付き合いください。

声が出せないほのくんのために、事前に用意しておいてよかったことも書いていきたいと思います。

修学旅行の申込

修学旅行へ行くちょうど1年前、2年生のほのくんがある日学校からもらった1枚プリントを大事そうに胸に抱いて持って来ました。

『修学旅行の申込について』

「わぁ、もうそんな時期なんだね」

年々月日の流れが早くなって唖然としているまびなんに

「書いて」

嬉しそうに言うほのくん

夕方担任の先生からも、

「今日ほのくんに修学旅行のプリントを渡しましたがご覧になりましたか?本人は何と言っていますか?」

と心配そうな声で電話がありました。

「本人楽しみにしているようで書いてと言ってすぐに出して来ましたよ」

「そうですか。よかったです。費用の振込方法についても別紙ありますので、よろしくお願いします。」

そばで様子をうかがっていたほのくんに親指をぐっと上に向けて、

「先生、すごく喜んでたよ!楽しみだね。お金も振込期間になったらすぐに振り込むから大丈夫だよ。」

まびなんが言うと、ほのくんは満足そうに微笑んで頷きました。

「うん。行く」

人生で1度しかない中学校の修学旅行。できることなら行ってほしいとは思っていましたが、自分の意志で行くと言ったことにとても感動しました。

なんとしても楽しく行けるようにしてあげたいと思った私は、振込期間初日にすぐ費用を振込ました。

「大丈夫だよー。もうお金振り込んできたから行けるよ!」

ほのくんは待ちきれない様子でした。

クラス行動で行きたい場所の希望調査が年度末にありました。

それから3年生になるまでは特別何かしなければならないこともなく、月日は過ぎて行きました。

3年生になって

3年生になって少しすると、もう修学旅行へ向けての取り組みがスタートします。

修学旅行の話し合いはたいてい午後の授業時間に行われていました。みんなと一緒に給食が食べられず、お昼で帰るほのくんが話し合いに参加することはありませんでした。

それでもグループ活動のメンバーもみんなが決めてくれたので、本番までの準備は着々と進みました。

これは本当にいつも感謝していることですが、ほのくんの同級生は全員がとても心の優しい子たちで、今までほのくんがグループ分けなどで1人あぶれることはただの一度もありませんでした。

どんなときでも誰かが必ず誘ってくれます。

グループ活動のコースは、同じグループの子たちが全て決めてくれました。

どういった日程で動くのか担任の先生と私の間でこまめにやりとりをして、どうしたらみんなが安心して一緒に行けるか話し合いました。

当日までに用意したもの

当日安心して旅行を楽しめるように、ほのくんのために用意したものが3つあります。

『意思表示カード』

要は「トイレに行きたい」「具合が悪い」など、自分の状況を伝えたいときにみんなに見せるカードです。

本人が出せない場合に備えて、先生に持っていてもらう分と2セット作りました。自分で出せない時は先生に出してもらい、カードを指差して使うためです。

以前も同じようなカードを作ろうとしたことがあったのですが、本人が使用を嫌がり1度あきらめていたのを再度チャレンジしてみることにしました。

特にグループ行動のときにお友だちに気持ちが伝えられずに動けなくなっては、計画通りコースを回れなくなるので、これだけはちょっと恥ずかしくても頑張って使ってみようと言ってほのくんを説得しました。

カードに直接文字やイラストを描いてしまうと、トイレなどは特に恥ずかしいだろうと思ったので、紙の色だけで表すことにしました。

色ごとに『青→飲み物を買いたい』というように内容を振り分けて一覧表を作り、カードと一覧表をセットにして、先生とほのくん、それぞれに渡しました。

これは今回上手くいって、その後も使っています。

最初は少し恥ずかしかったようです。

周りの人にとってどうしてこのカードが必要なのか、自分にとってどういう時に役立つのかをじっくり話しました。

もしカードがなくて気持ちが伝わらないとどういうことになる可能性があるか、本人にゆっくりと考えてもらいました。

ちょうどその頃また移動教室のときに動けなくなっていたので学校で使ってみるよう言って行かせました。

持たせた初日は出せませんでしたが、2日目からは出せるようになり、

「帰るというカードを出したので帰します」

と学校から連絡があり帰って来ていました。帰ってきた彼を大絶賛しました。

移動教室のときに動けなくなることについては、

「修学旅行に行ったらがんばるから、今は無理したくない」

と家で気持ちを話してくれたので、希望通り好きに帰ってきていいよと伝えました。

自分がどうしたいのか具体的な気持ちをはっきりと言えたことが成長だと思います。

『食べたいものリスト』

もう1つ用意したものは、グループ行動のときに食べたい食事のメニューをリストにしたものです。

担任の先生が事前に用意しておくといいと提案してくださいました。

行く予定のお店は同じグループの子たちが決めてくれたので、自宅でお店のホームページからメニューを調べて注文するものを選びました。

大きな付箋にお店の名前と注文するものを書いて、『修学旅行のしおり』の表紙の内側に張り付けて持たせました。

交通費は少し多めにICカードにチャージしておき、現金も余裕をもって使えるだけ財布に入れ、その他は学校で決められた持ち物リストの通りにパッキングしました。

『緊急脱出ゲート』

修学旅行直前まで先生がとにかく心配していたのは、当日飛行機に乗る直前に怖くなって動けなくなることでした。

普段のほのくんの様子から先生の立場になって考えると、確かに不安でたまらないでしょう。

「当日の朝、私が空港まで車で行って待機しているので、ちょっとでも心配な様子が見られたらすぐに連絡をください。出動します!」

電話での事前相談の段階で決めていたことでした。

私自身は、電話がかかってくることはないだろうと思っていましたが、とにかくこの時最優先で大切にしなければならないのは、引率の先生と同級生のみんなだと思いました。

いくら私がほのくんなら「行きたい」と言ったら、必ず動くことができる!と信じていたとしても、そのまま何もせず行かせるわけにはいきません。

当日全員が安心して旅立つために、ほのくんが土壇場で離脱できる選択肢を確保しておくことは必須でした。

いよいよ当日

早起きして旅行カバンとお弁当を持って、ついに出発です。

お弁当箱には、

「Good luck!」

付箋で応援メッセージを添えました。

いつものんびりなほのくんですが、この日ばかりは余裕を持って出発しました。

まびなんもすぐに空港まで向かいました。

この日の朝はキレイな青空。

飛行機が飛ぶ時間まで、電話があればすぐ駆けつけられるように待機していました。

結局電話はかかって来ませんでした。

帰りの道の駅で下の子たちにお土産を買って帰りました。

無事出発できて踊り出しそうなくらい嬉しかったです。

旅先の様子

旅行中の子どもたちの姿は、学校のホームページで先生が撮ってくれる写真を見ることができました。

いつもなら逃げてしまうところですが、旅先だからなのか、しっかり写っていてくれました。

ほのくんの写真は全て家族みんなで見ました。たくさん写っていてくれました。

学校ではクラスのみんなの前で食事をするのがつらいと言って、給食を食べずに帰って来ていますが、旅先では気分が変わったのかみんなとご飯を食べることができました。

心配していたグループ活動の時間もお友だちと全て行動できました。

万が一動けなくなった時は、校長先生が一緒にいてくださることになっていましたが、最後までお世話にならず過ごせてよかったです。

日本科学未来館、鶴岡八幡宮、鎌倉小町通、浅草寺など他にも色々めぐり、なかなかハードな旅でした。

無事帰還

定刻よりは少し遅れましたが無事に帰って来ました。

しばらく家の前をウロウロして待っていましたが、なかなか帰ってこないので、結局中学校まで迎えに行きました。

すっかり暗くなった道を2人で歩いて帰りました。

修学旅行を振り返って

帰宅後、あまりにも疲れていたようで、しばらく風邪をひいてしまいましたが、旅行はとても楽しかったと言っていました。

「行ってよかった!楽しかった。がんばった。イェーイ」

ほのくんはとても誇らしげでした。

自分のための思い出に残るお土産を買っておいでと言って行かせましたが、みんなで食べられるお菓子をお土産にし買ってきてくれました。

みんなで美味しくいただきました。イラストがひとつひとつ違ってかわいかったです。(「江ノ電で行く ぐるっと周遊 チョコラングドシャ」)

以上が、ほのくんの修学旅行のお話です。

『意思表示カード』と『食べたいものリスト』は今回とても役立ちました。

先生やクラスメイトのおかげで、今回の旅行を通してほのくんも少し自分に自信が持てるようになった気がします。

みなさまに深く感謝いたします。ありがとうございます♬

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